着ぐるみや仮面を被った人物に対して異常な恐怖や不安、パニック反応を抱く状態を、学術用語でマスクロフォビア(Masklophobia)と呼びます。アメリカ精神医学会(APA)が定める診断基準『DSM-5』においては、特定の対象や状況に対して著しい恐怖を抱く「限局性恐怖症(特定恐怖症)」の範疇に位置づけられる状態です。
大人が着ぐるみを怖いと感じる最大の心理的トリガーは、「視線と表情が完全に固定されていること」にあります。人間の脳には他者の表情筋の微細な動きをミリ秒単位で読み取り、相手が敵か味方か、怒っているのか喜んでいるのかを瞬時に判別する高度な社会脳ネットワーク(扁桃体や紡錘状回)が備わっています。
ところが、着ぐるみは常に満面の笑みや無表情を貼り付けたまま、突如として体を大きく揺らしたり急接近してきたりします。脳の防衛システムは「表情と行動の不一致」「感情が一切読み取れない不気味さ」を即座に「潜在的脅威」と判定し、闘争・逃走反応(Fight or Flight)の警報を鳴らしてしまうのです。