『滝沢歌舞伎』が演劇界に遺した功績の筆頭は、常識を覆すエモーショナルな演目の数々です。伝統芸能の様式美を取り入れつつ、アスリート顔負けの身体性で観客を圧倒した代表的シーンを振り返ります。
何よりも観客の度肝を抜いたのが、名物演目「腹筋太鼓」です。上半身裸のメンバーが腹筋の体勢(V字立ちに近い角度)を保ったまま、重さ数十キロの和太鼓を力任せに打ち鳴らし続けるパフォーマンス。さらに巨大な回転機構「メガボルト」に固定された3人(主に岩本照さん、佐久間大介さん、深澤辰哉さん、あるいは向井さんや目黒さんら)が、すり鉢状に傾斜しながら猛スピードで回転しつつ太鼓を連打する姿は、舞台演劇の枠組みを超えた極限のサーカスであり、祈祷のようでもありました。滴り落ちる汗と浮き立つ筋肉の躍動は、演者の闘志を視覚的に証明する象徴でした。
また、古典の要素を巧みに現代エンタメへ落とし込んだ「鼠小僧」の喜劇パートでは、メンバー各自のキャラクターが遺憾なく発揮されました。お丸役の深澤辰哉さんによる変幻自在のアドリブ、金之助役の向井康二さんの軽妙な掛け合い、そしてクライマックスで本物の水数百キロが舞台上に降り注ぐ大立ち回りは、劇場ならではの熱気を生み出しました。一転して、白塗りの化粧を舞台上で行う「生化粧」や、瞬時に表情の面を切り替える「変面」など、静と動のコントラストが客席を息を呑む空間へと変貌させました。
そして、すべての幕引きを飾ってきたのが伝説のアンセム「WITH LOVE」です。手話を取り入れた柔らかな振り付けと、仲間や観客への感謝を歌い上げる旋律。大量の桜吹雪が劇場全体に降り積もるなか、限界まで身体を酷使したメンバーが晴れやかな笑顔で客席を見つめるその瞬間は、演者とファンが共有した至高のカタルシスとして、今も多くの人々の記憶に刻まれています。