劇中における最大の転換点の一つが、清太の亡き母の着物を売って米に変えるシーンである。「お母さんの着物を売ってお米にしよう」という提案は、子供たちの目には大切な遺品を奪う非情な行為に映る。しかし、おばさん自身の視点に立つとどうだろうか。
当時、米は命そのものだった。実子たちを飢えさせないため、そして居候である清太たちにも米を食べさせるために、価値あるものを物々交換に出す。これは極めて合理的な生存戦略である。実際、米を手に入れた直後のおばさんは清太たちにも白米を分け与えている。問題は、清太がその「代償」の重さと、共同体の一員として労働力を提供することの意味を理解できなかった点にある。権利だけを主張し、義務を果たさない居候に対する厳しさは、戦時下という異常事態でなくても当然生じ得る摩擦だ。