伊能忠敬記念館の最大の強みは、展示されている資料群の質と規模にあります。2010年に文化庁より国宝指定を受けた「伊能忠敬関係資料」は、地図・絵図類、測量器具、測量日記や手紙類など合計2,345点にのぼり、その中核を担う収蔵庫と展示室がここに集約されています。
展示室に入ると、まず目を奪われるのが大画面シアターと精緻なプロローグ展示です。忠敬が商人として佐原の伊能家を盛り立て、50歳で家督を譲った後に江戸へ出て高橋至時に弟子入りした過程が、時系列でドラマチックに紹介されます。
展示の中心となる伊能図・測量器具展示では、実際に全国の測量で使用された「象天儀(しょうてんぎ)」「梵天(ぼんてん)」「量程車(りょうていしゃ)」などの実物や精巧な復元品が並びます。特に角度を寸分の狂いもなく計測するための「大方位盤」や、北極星の高度を測る「垂球(すいきゅう)」付きの観測機器類は、江戸時代後期の日本の科学技術と職人技の極致を示すものです。
圧巻は、第4展示室で公開される国宝『大日本沿海輿地全図(だいにほんえんかいよちぜんず)』の展示です(※保存のため定期的に複製・原本の展示替えを実施)。縮尺3万6千分の1の大図、21万6千分の1の中図、43万2千分の1の小図があり、床一面に敷き詰められた大型フロア展示では、現代の人工衛星データや国土地理院の地図と重ね合わせても海岸線の輪郭がほぼ一致するという驚異的な精度を自らの目で確かめることができます。