鶴田浩二のキャリアは、昭和の映画界における二大巨頭の歴史そのものでもある。初期の東宝時代には甘いマスクの二枚目スターとして爆発的な人気を博し、日本映画界の最前線を走り続けた。しかし、現状に満足することなく新たな表現を求めて東映へと移籍。この大胆な決断の裏にも、妻・須美子さんの静かな理解と励ましがあった。
撮影所を移すことは、役者人生を賭けた大博打でもあった。新しい環境や役柄の変更に対する夫の葛藤を、須美子さんは家の中でじっと聞き役に徹することで受け止めた。華やかなスタジオのスポットライトから離れた自宅の居間で、二人きりで交わされた会話こそが、大スターの挑戦を支えるエネルギー源となっていたのだ。