都市計画道路の整備や鉄道の高架化現場を通りかかるたび、「何年も工事現場の囲いがあるのに、一向に進んでいないように見える」と感じる住民は少なくありません。国土交通省や各自治体の事業資料を精査すると、連続立体交差事業の平均事業期間は当初計画の約1.5倍から2倍近くに延伸し、着工から完了まで15〜20年以上を要するケースが珍しくないのが実態です。この極端な工事期間の長さには、都市インフラ特有の過酷な現場事情が存在します。
工事が長期化する最大の要因は、鉄道の営業運行を1日たりとも止めない「生体解剖」のような工事手法にあります。終電が通過してから始発列車が走るまでの深夜の間合い時間、実質わずか2時間半から3時間程度の極めて限られた枠内でしか重機を動かせません。線路の真上に橋桁を架設したり、仮の線路へ軌道をミリ単位で移設したりする作業は、一晩で数メートルずつしか進まない緻密な作業の積み重ねです。
さらに、都市部における用地取得の難航が追い打ちをかけます。高架橋や側道を建設するためには沿線の地権者数百名と個別に用地買収交渉を行う必要があり、たった1軒の境界確定や立ち退き補償の交渉が難航するだけで、区間全体の工事がストップします。仮線路を敷くスペースが線路脇に確保できない狭小地では、現在の線路の真上に高架を構築していく特殊な直上工法を採用せざるを得ず、これが施工難易度と工期をさらに押し上げる構造的要因となっています。