竹久夢二(1884–1934)は、憂いを帯びた大きな瞳と柳腰の女性を描いた「夢二式美人」で一世を風靡した大正ロマンの象徴的存在です。しかし、彼が遺した足跡は純粋絵画にとどまりません。本の装幀、楽譜の表紙絵(『セノオ楽譜』)、雑誌の挿絵、さらには浴衣や千代紙のパターンデザインに至るまで、日本のグラフィックデザインおよび商業美術の先駆者として極めて多彩な表現を切り拓きました。
2026年現在の竹久夢二美術館では、日本画や油彩などの貴重な肉筆原画はもちろん、当時の印刷メディアや装幀本、スケッチ、遺品など約3,300点に及ぶ膨大なコレクションの中から、3か月ごとにテーマを変えた企画展を展開しています。
展示室へ足を踏み入れると、柔らかな間接照明の中に夢二の肉筆画や初版本が整然と並びます。大正ロマン 竹久夢二 代表作として名高い肉筆画の繊細な筆遣いや、自作の詩『宵待草』に代表される叙情詩人としての横顔、さらには彼が愛した3人の女性(他万喜・彦乃・お葉)との劇的な人間模様を伝える一次資料が、鑑賞者を100年前の濃密な抒情の世界へと引き込みます。