楽曲の全貌を創り上げた川谷絵音というソングライターの異才ぶりは、この初期作品においてすでに完成の域に達していた。彼の描く情景は、絵画のように繊細でありながら、ナイフのように尖っている。
私たちが普段日常で覆い隠している後ろ暗い感情や、自己憐憫の痛みを、彼は容赦なく美麗な旋律に乗せて暴き出す。「泣き声」や「さよなら」といった使い古されたはずの語彙が、彼のフィルターを通すことでまったく新しい詩的強度を獲得するのだ。言葉の裏側に潜むのは、傷つくことを恐れながらも他者を求めずにいられない、人間の生々しいエゴイズムにほかならない。