数あるグルメドラマの中で、なぜ本作だけが突出した存在であり続けるのか。その理由は、主役が五郎であると同時に、料理を作る「店と人」であるからに他ならない。仕込みに何時間もかける店主の手元、使い込まれた鉄鍋、年季の入った品書きの短冊。そこには、市井の人々が紡いできた暮らしの歴史が宿っている。
誰にも邪魔されず、気を遣わず、好きなものを好きな順で食べる。五郎の実践する孤高の食事スタイルは、SNSでの繋がりや他者の視線に縛られがちな現代において、もっとも贅沢で自由な時間の過ごし方を提示している。孤独とは寂しさではなく、自分自身を取り戻すための豊かな時間なのだと、番組は静かに語りかけてくる。