「まさか、宅録に近いあのデモ音源に近い状態でリリースされた楽曲が、ここまでの社会現象になるとは誰一人予測していなかった」——当時の楽曲制作に関わったレーベルのエンジニアは、そう振り返る。元々はスタジオ代の工面にも苦労しながら録音されたという本作。歌詞の中に登場する特定のブランド名について、当初は権利上の懸念を口にする関係者も存在したという。
しかし、本人の実体験から紡ぎ出されたリアルな言葉を変えてしまえば、楽曲が持つ生々しい熱量が失われてしまう。クリエイティビティの純粋さを優先したこの決断こそが、のちに空前の共感を生む最大の勝因となった。マーケティングの計算を一切排除した無防備なストーリーテリングが、リスナーの心をつかんで離さなかったのだ。