日本には古来、鳥の声を人間の言葉に置き換えて記憶する「聞きなし」という高度な言語文化が存在します。しかし、文字面と実際の野生の鳴き声のパワーバランスには、時に凄まじいギャップが存在します。
藪の爆音スナイパー・コジュケイ「チョットコイ」の圧倒的音圧
童謡や図鑑で親しまれるコジュケイの「チョットコイ」という聞きなし。のどかな田舎道を連想させますが、現場で実際に浴びるその声は「愛らしいお誘い」とは程遠い破壊力を持っています。中国原産の外来種として大正時代に放鳥されたキジ科の鳥で、オスは喉を極限まで膨らませて金属的な絶叫を轟かせます。
実際の人間の耳には「ピッピ、チョットコーイ!チョットコーイ!」と、まるで警報ブザーが鳴り響くような凄まじい音圧で聞こえます。藪のすぐ数メートル先で鳴かれた場合、会話が一時中断されるほどのデシベル値に達します。この声は縄張りを侵犯しようとするライバルを威嚇するための咆哮であり、招いているのではなく「入ってくるな」と怒号を上げているのが実態です。
ホトトギス「テッペンカケタカ」の文学的背景と血を吐く叫び
「目に青葉 山ほととぎす 初鰹」と詠まれた初夏の風物詩、ホトトギス。その鳴き声は「テッペンカケタカ(天辺欠けたか)」「特許許可局(トッキョキョカキョク)」と聞きなされます。しかし実際の鳴き声は「キョッ!キョッキョッ、キョキョキョキョ!」と、息つく暇もなくたたみかける鋭角な叫び声です。
口内が鮮やかな赤色をしていることから「血を吐くまで鳴く」と伝説化されましたが、ホトトギスはウグイスの巣に卵を産み落として育てさせる「托卵(たくらん)」を行う鳥です。産卵期が短く、短期間でパートナーを見つけて縄張りを確保しなければならない生物学的焦燥感が、あの狂気じみた連呼の背景にあります。
ヒヨドリの悪評と愛嬌|「ヒーヨ!」という鼓膜破りの理由
野鳥愛好家の間でも「声が大きすぎて他の鳥の声がかき消される」と時に苦笑混じりに語られるのがヒヨドリです。鳴き声はストレートに「ヒーヨ!ヒーヨ!」「ピィエェェ!」と耳を劈く甲高さを誇ります。
ヒヨドリは日本列島周辺に極めて偏って生息する固有度の高い鳥で、海外のバードウォッチャーから見れば来日してでも見たい貴重な野鳥です。果実や花の蜜を好むため、庭先のミカンや桜の木を独占しようとして激しく威嚇音を放ちます。感情表現が豊かで、仲間への合図、外敵への威嚇、餌の発見など、イントネーションを巧みに使い分ける観察の面白さを持っています。