息子の死という壮絶な悲しみを乗り越え、草刈正雄は役者としてさらなる高みへと上り詰めていった。その大きな転機となったのが、NHK大河ドラマ『真田丸』で演じた真田昌幸役だ。昌幸が見せる豪胆さと時折覗かせる孤独、そして子を思う父親としての情愛には、亡き息子・雄士氏への思いが重なっていたのではないかと多くの視聴者の心を揺さぶった。
その後、連続テレビ小説『なつぞら』で見せた頑固ながらも温かい開拓者・柴田泰樹役でも、その演技には深みと慈愛が満ちていた。劇中で家族を包み込む柔らかな眼差しは、空の上で見守る長男に向けられたものでもあったのだろう。悲しみを逃げることなく受け止め、それを役者としてのエネルギーに変えていく姿は、まさに表現者・草刈正雄の生き様そのものと言える。