多くのファンやリスナーが最も衝撃を受けたのは、2023年春のシングル『LADY』のリリースや、世界的ファッション誌『GQ JAPAN』の表紙に登場した瞬間でした。それまでトレードマークだった「目元を完全に覆い隠す前髪」を大胆に左右へ分けたセンターパートで現れ、涼やかな目元と端正な眉を完全に露出させたのです。ネット上では「前髪が上がって初めてしっかり目が見えた」「こんなに綺麗な顔立ちだったのか」と騒然となりました。
彼が長年、前髪で顔を隠し続けていた背景には、単なるファッションにとどまらない深い個人的な理由がありました。過去の音楽雑誌(『ROCKIN'ON JAPAN』や『CUT』など)のロングインタビューにおいて、米津玄師は幼少期に唇を負傷して縫合手術を受けた経験や、周囲と馴染めなかった記憶から「自分の容姿は怪物のように醜い」という過度な自己否定感を抱いていたことを率直に告白しています。
ニコニコ動画でボカロP「ハチ」として活動していた頃からメジャー初期にかけて、トレードマークの長い前髪は、外の世界から自身を守る一種の「防壁」であり、傷ついた自意識を覆い隠すためのシェルターとして機能していました。しかし、国民的ヒット曲を連発し、スタジアム規模のツアーを成功させ、世代を超えたリスナーと直接対峙する中で、その防壁は必然的に不要となっていきます。前髪を上げ、素顔をまっすぐに見せる選択は、過去のトラウマや容姿のコンプレックスを昇華し、一人の人間として社会と正対する覚悟を決めた証左といえます。