松本盆地の空で何が起きているのかを理解するには、地理的条件と大気のメカニズムを知る必要があります。松本市街地は標高約590〜600メートル前後に位置しており、これは東京タワー(333メートル)や東京スカイツリー(634メートル)の展望デッキに匹敵する高さです。標高が100メートル上がるごとに気温は約0.6℃低下するため、平野部と比べてベースとなる気温そのものが低めに推移します。
さらに、周囲を北アルプスや美ヶ原などの山々に囲まれているため、風が遮られ熱がこもりやすい一方で、夜間には地表の熱が急速に上空へ逃げる「放射冷却現象」が顕著に発生します。これが、松本市寒暖差の理由の中核です。春や秋の晴天日には、最高気温が20℃を超えても最低気温が5℃近くまで落ち込むなど、わずか半日の間に季節が移り変わったかのような劇的な変化が生じます。
また、夏の午後に頻発する局地的な急な雨にも明確な原因があります。強い日差しによって暖められた盆地底の空気が山肌に沿って上昇し、急速に積乱雲を発達させるためです。気象台の発表する長野県松本市気象情報を精査すると、長野市などの北信地域や諏訪地域とは異なる、松本特有の局地風と気流の収束が雨雲を急発達させている実態が浮き彫りになります。