『唐獅子図屏風』について多くの人が抱く疑問の一つに、「なぜこれほどの超名作が、近年まで国宝に指定されていなかったのか?」という点があります。本作が正式に国宝指定を受けたのは2026年(令和3年)のことです。
長年指定されていなかった理由は、美術的評価が低かったからではありません。日本の文化財保護法において、皇室が所有する「御物」は国の文化財指定制度の対象外とされていたためです。御物は宮内庁によって手厚く保護・管理されており、あえて国の指定を受ける法的手続きをとっていませんでした。
しかし、2018年に宮内庁三の丸尚蔵館の収蔵品が国宝・重要文化財の指定対象となるよう運用が見直され、2026年に伊藤若冲の『動植綵絵』や『蒙古襲来絵詞』などとともに、満を持して国宝へと指定されました。「近年になって価値が認められた」のではなく、「長年の制度上の位置づけが変わり、公的に最高位の文化財として位置づけられた」というのが歴史の真実です。