多くの看護学生の憧れでありながら、なぜ戴帽式は廃止へと向かったのでしょうか。その最大の理由は、医療現場におけるナースキャップの完全廃止と感染対策の徹底にあります。
1990年代後半から2000年代にかけて、院内感染対策への意識が世界規模で高まりました。糊(のり)で固められたナースキャップは毎日洗濯することが難しく、MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)をはじめとする病原体の温床になりやすいことが研究で明らかになったのです。さらに、処置中にカーテンや輸液ルートにキャップが接触して滅菌状態を損なう危険性や、点滴ボトルを引っ掛けるインシデントのリスクも指摘されました。その結果、全国の病院でナースキャップは姿を消し、手入れが容易で衛生的なスクラブやパンツスタイルが標準となったのです。
もうひとつの大きな要因が、男子看護学生の増加とジェンダーレス化です。もともと女性用装具であるナースキャップを男性が被ることはなく、かつては胸ポケットに校章バッジやペンを挿すなど別々の対応が取られていました。しかし、性別による区別をなくし平等を重んじる観点から、女性にのみキャップを授ける形式は現代の教育方針にそぐわないと判断されるようになりました。
「病院実習で一度も使わない装具を、式典のためだけに購入して被せるのは不自然ではないか」という現実的な議論が教育現場で主流となり、戴帽式を取りやめる学校が急増したのです。