布の挙動は一見複雑に見えますが、作用する力学を分解すると驚くほどシンプルに体系化できます。作画現場で指針とされる基本原則は、以下の3つの力学メカニズムです。
第1に「引っ張りじわ(テンション)」。2つの支点の間が引き伸ばされたときに生じる直線的なシワです。肩から反対側の脇下へ、あるいはボタン掛け部分から外側へ向かって走るシワがこれに該当します。このシワは必ず2つの引っ張り点同士を結ぶ最短距離を描くという明確な法則性を持ちます。
第2に「たるみじわ(ドレープ)」。重力によって布が下方向に落ち込み、余分な生地同士が重なり合ってできる深い谷間です。袖口に溜まる生地や、ゆったりとした部屋着の裾、女性のフレアスカートに見られる波打つような陰影が代表格です。たるみじわは重力のベクトル(鉛直下向き)を常に意識することが最大のコツです。
第3に「圧迫じわ(クリース)」。関節を折り曲げた内側や、ベルトで帯状に固定された境目に生じるギュッと凝縮されたシワです。布が逃げ場を失って押し潰されるため、細かく鋭角な谷が折り重なる特徴を持ちます。この3種類を混同せず、それぞれの部位で「いまどの力が主導権を握っているか」を判断するだけで、作画の迷いは激減します。