ネット上のコミュニティ(知恵袋、生活系掲示板、SNS)を調査すると、ゴムをつけたまま使い続けてしまう人々の心理には共通のパターンが浮かび上がります。
「子どもの頃、祖父母の家で使っていた急須にずっと付いていたから、外してはいけない部品だと思っていた」「急須はお茶を淹れると先から垂れるもの。あのビニールは液だれを受け止めるパーツだと思い込んでいた」といった書き込みが数多く確認されます。親世代の誤った使い方が子世代へ家庭内伝承として受け継がれ、疑問を差し挟む余地のない「当たり前の光景」として定着してしまった実態が覗えます。
さらに事態を複雑にしているのが、EC市場における流通事情です。Amazonや楽天市場を調査すると、「急須 口ゴム」「急須の先のゴム」といった検索ワードに対して200件を超える関連商品がヒットします。工具や業務用資材を幅広く取り扱うモノタロウでも急須口ゴムの取扱需要が根強く存在し、大手キッチン用品メーカーのパール金属が展開する「きゅうすつぎ口(食品衛生法適合のシリコンゴム製・2個組)」などは、Yahoo!ショッピングや量販店で定番アイテムとして販売されています。
「メーカーが外せと言っているのに、なぜ専用の口ゴムが市販されているのか?」という混乱が生じるのは自然な流れです。ここで明確に区別すべきなのは、「最初から付属している輸送用保護チューブ」と「食品用グレードで作られた液だれ対策用の市販シリコンキャップ」は全くの別物であるという点です。前者は単なる工業用PVC(塩化ビニール)製が多く、耐熱性や衛生管理を前提としていません。対して後者は、定期的な脱着・洗浄を前提とした機能パーツです。この境界線が曖昧なまま同一視された結果、「急須の先のゴムはつけたままで良い」という誤認が社会全体で固定化されていきました。