市場に最初の決定打を放ったのは、厚生労働省が策定した「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」だった。従来の「1日あたり純アルコール約20g(日本酒1合程度)」という曖昧な目安から一歩踏み込み、疾患ごとの発症リスクを純アルコール量で緻密に可視化したのである。ガイドラインによれば、生活習慣病のリスクを高める飲酒量は1日あたり男性40g以上、女性20g以上。アルコール度数9%の500ml缶を1本飲み干すだけで純アルコール量は約36gに達し、女性であれば1本で一日の許容量を軽々とオーバーする。
この数値の破壊力は凄まじかった。日本経済新聞をはじめとするメディアが「ストロングショック」を報じるなか、真っ先に動いたのがアサヒビールだ。同社はアルコール度数8%以上の缶チューハイ新商品を今後は発売しない方針を打ち出し、既存の高アルコール商品も順次縮小する決断を下した。企業の社会的責任(ESG)と健康志向への適応を優先し、確固たる収益源を自ら断つ異例の撤退劇。酒類・飲料業界に走った激震は、他社の戦略をも根本から見直させる引き金となった。