腐敗した豚肉を誤って口にしてしまった場合、体内でどのような異変が起きるのでしょうか。食肉由来の食中毒において特に警戒すべき病原体と、その潜伏期間および臨床症状を整理します。
まず警戒すべきはサルモネラ菌(Salmonella)です。豚の腸管内に高確率で生息しており、解体・加工時に肉へ付着します。摂取後の潜伏期間は通常12〜48時間(時に数日)で、主症状は40℃近い高熱、激しい腹痛、そして1日に何度もトイレに駆け込むような水様性の下痢です。脱水症状が急速に進み、小児や高齢者では重症化して菌血症を引き起こす事例も報告されています。
次に、前述した黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)による「毒素型食中毒」です。こちらの最大の特徴は潜伏期間の短さ(食後30分〜6時間、平均約3時間)にあります。すでに肉の中で毒素(エンテロトキシン)が作られているため、体内に入った瞬間に胃や腸の神経を刺激し、激しい悪心、突然の噴出性嘔吐、激痛を伴う下痢を引き起こします。発熱はあまり見られないものの、あまりの吐き気と腹痛に身動きが取れなくなり、夜間に救急搬送されるケースが後を絶ちません。
さらに豚肉には、ギラン・バレー症候群の原因にもなり得るカンピロバクターや、下痢型食中毒を引き起こすウエルシュ菌のリスクも潜んでいます。厚生労働省の食肉衛生基準でも、食肉の取り扱いにおいては「交差汚染の防止(まな板や包丁の使い分け)」と「迅速な冷却・確実な加熱」が強く指導されています。特に古い肉を触った手や調理器具から他の食材へ菌が移る二次汚染は、家庭内で一家全員が倒れる典型的なパターンです。