やなせ氏の言葉がなぜこれほどまでに多くの人々の心を揺さぶり続けるのか。その最大の理由は、彼が決して「安易なポジティブ思考」を押し付けない点にあります。
「絶望の隣は希望です」という有名な言葉の真意は、絶望のどん底に落ちたときこそ、すぐ隣にある小さな光に気づくことができるというリアリズムです。やなせ氏は漫画家として世に出るまで長い年月を要し、同期の天才たちが脚光を浴びる中で劣等感を抱え続けました。だからこそ、敗者の痛みや持たざる者の悔しさを誰よりも熟知していました。
「人を喜ばせることが、自分の一番の喜びになる」「満員電車に揺られながらでも、希望を捨てなければ席はいつか空く」。こうした名言の数々は、机上の空論ではなく、90年以上の過酷な人生経験を実直に生き抜いた人間の肉声だからこそ、私たちの胸を激しく打ちます。