日本におけるコウノトリの歴史は、絶滅と再生のドラマそのものです。農薬の使用拡大や生息環境の悪化により、1971年に兵庫県豊岡市で最後の1羽が保護され、日本の空から野生のコウノトリは完全に姿を消しました。
しかし、半世紀に及ぶ人工飼育の苦闘と、ロシアから譲り受けた個体による繁殖成功を経て、2005年に豊岡市で歴史的な自然放鳥が開始されました。地域の農家が無農薬・減農薬による「コウノトリ育む農法」へと舵を切り、餌場となるドジョウやカエルが棲む田んぼを蘇らせた結果、奇跡的な野生復帰が現実のものとなったのです。
公式発表資料および最新の追跡調査によると、2026年現在、野外で生活するコウノトリの個体数は約400羽規模に達し、全国47都道府県のほぼ全域で飛来・目撃が確認されています。兵庫県から始まった放鳥ネットワークは、福井県、千葉県野田市、栃木県小山市など各地の自治体へと広がり、本州・四国・九州各地で定着・繁殖するペアが年々増加しています。「滅多に見られない幻の鳥」から、「環境が整った地域に幸せを届ける隣人」へと、その生息実態は着実に進化を遂げています。