SNSやネット掲示板などでは、「毎年何億円も稼いでいれば遊んで暮らせる」といった羨望の声が散見されます。しかし、ここにはプロスポーツビジネス特有の大きな盲点が存在します。「ツアー獲得賞金や年収の総額」と「実際に手元に残る手取り資金」の間には、想像を絶する隔たりがあるという現実です。
特に主戦場をアメリカに置くプロゴルファーの経費事情は、日本のトーナメントを主戦場とする場合とは比較になりません。広大なアメリカ大陸を毎週飛行機で横断し、転戦を支える「チーム渋野」を維持するためには、莫大な固定費が毎月発生します。
主な必要経費の内訳を検証すると、専属キャディへの基本給に加え、獲得賞金の5〜10%にのぼるインセンティブ報酬。さらに専属トレーナーやコーチ、通訳兼マネージャーの渡航費・宿泊費・日当。日米間の国際線ビジネスクラスや米国内線の移動費、現地でのレンタカー代やキャンピングカーの手配費用などを含めると、年間で推定3,000万〜5,000万円、遠征規模によっては1億円近くに達することもあります。
さらに見過ごせないのが税務の壁です。米国で獲得した賞金には現地の連邦税や州税が課され、日米租税条約に基づく二重課税調整を経るものの、最高税率ゾーンに位置するトッププロの手取り額は総収入の半分前後にまで圧縮されます。過酷なコストと重税を背負いながら世界を転戦するためには、賞金以外の「年間数億円に及ぶスポンサー収入」という強固な後ろ盾が絶対不可欠なのです。