本作の礎となったのは、日本文学の巨匠・大岡昇平が遺した名作裁判小説だ。時代を超えて読み継がれる古典を、現代のコンテクストへと鮮やかにアップデートしたのが「連続ドラマW 事件」である。昭和から令和へと時代が移り変わっても、法と人間が織りなす不条理の根幹は決して変わらない。
法廷サスペンスドラマという確立されたジャンルにおいて、本作が異彩を放つのは、安易なカタルシスを徹底的に拒絶した点にある。裁判長、検察官、弁護人、そして裁判員。それぞれの思惑と偏見が複雑に絡み合い、事実が法廷という密室で変形していくプロセスを冷徹に描き切った。原作の持つ文学的な格調高さを損なうことなく、現代の法制度が抱えるリアリティを注入した手腕は見事というほかない。