バイアグラの主成分であるシルデナフィルは、血管拡張を促す酵素「PDE5(ホスホジエステラーゼ5)」を阻害することで血流を改善する薬剤です。男性器と同様に、女性の陰核(クリトリス)や膣周辺の海綿体組織にもPDE5が存在するため、バイアグラを女性が服用した場合、骨盤腔内および外性器周辺の血流が増加するという身体的反応が起こります。
血流が促されることで、局所の充血や膣分泌液(愛液)の分泌が促されやすくなるケースは生理学的に確認されています。しかし、これはあくまで「局所の物理的な血流変化」に過ぎません。脳の中枢神経に作用して性的欲求を呼び起こす性質のものではないため、「性的な気分が高まる」「飲むだけで興奮する」といった媚薬的効果は医学的に否定されています。
海外で行われた複数の臨床試験(女性性機能障害・FSADを対象とした研究)においても、抗うつ薬の副作用による性機能低下など一部の特定条件下を除き、プラセボ(偽薬)と比較して有意な満足度の向上が得られなかったケースが多く報告されています。女性の性的反応は血管動態だけでなく、ホルモンバランス、神経伝達物質、パートナーとの関係性や心理的ストレスが極めて複雑に絡み合っているためです。