性格や頭の形に関する噂とは異なり、小児整形外科および産小児科の臨床現場において、逆子出生児に対して医師が極めて厳格にモニタリングを行う対象があります。それが「先天性股関節脱臼の注意点」(現在の医学的正式名称:発育性股関節形成不全=DDH)です。
日本整形外科学会や小児整形外科学会の知見によれば、逆子は女児、家族歴(血縁者に股関節疾患がある)と並ぶ発育性股関節形成不全の最大のリスクファクターとして位置づけられています。胎内でお尻を下にしていた赤ちゃんは、子宮壁の圧迫を受けながら股関節を深く曲げ、膝をピンと伸ばした「単殿位」などの不自然な姿勢を長時間強いられがちです。この体勢は大腿骨の骨頭が骨盤側の受け皿(臼蓋)から外れやすくなる物理的ストレスを生じさせ、関節が緩んだ状態で生まれてくるリスクを高めます。
そのため、母子健康手帳に記載される「乳幼児健診のチェック項目」において、逆子で生まれた赤ちゃんは生後1か月健診および3〜4か月健診で入念な触診と観察が行われます。医師が確認する主要なポイントは以下の通りです。
- 股関節の開排制限:仰向けに寝かせた赤ちゃんの両膝を曲げて外側に開いた際、床面近く(80度以上)までスムーズに開くかどうか。硬くて途中で引っかかる感覚がないか。
- 大腿皮膚溝の左右非対称:太ももの内側やお尻の下にある皮膚のしわの数や深さ、位置に明らかな左右差がないか。
- 下肢の短縮・クリック音:膝を立てたときに膝の高さに左右差がないか、股関節を動かした際に「ポキッ」「コクッ」という脱臼整復音(オルコラーニ徴候)がないか。
家庭内での予防において決定的に重要なのが「逆子の赤ちゃんの寝かせ方」と抱っこの方法です。昔の日本で多用されていた「足をまっすぐに伸ばして布でぐるぐる巻きにするおくるみ」や、下肢をピンと伸ばした姿勢を固定する抱っこ紐の誤用は、外れかけている股関節を完全に脱臼させてしまう危険な誘因となります。日常ケアでは、赤ちゃんの足がカエルのように自然に開いた「M字開脚」の状態を常に確保することが鉄則です。抱っこする際は向かい合わせで赤ちゃんの太ももを大人の胴体に巻き付かせるコアラ抱きを意識し、おむつを替える際も足首を引っ張って持ち上げるのではなく、お尻を下から支えて優しく持ち上げてください。