筋肉芸を語る上で外せないのが、歴史に残る名作ネタの数々です。中でも象徴的なのが、なかやまきんに君の代名詞である『筋肉ルーレット』です。
このネタの元ネタと誕生秘話は、きんに君が2006年から2011年にかけて敢行したアメリカ「筋肉留学」時代の過酷な経験に遡ります。言葉の壁にぶつかり、現地のコメディクラブで全くウケない屈辱を味わった彼は、「言語を使わずに胸筋の痙攣(ピクピク動かす随意収縮)だけでアメリカ人を笑わせるにはどうすればいいか」を極限まで突き詰めました。ボン・ジョヴィの『It's My Life』に乗せて左右の大胸筋を交互にピクつかせ、最終的に「赤なのかい?黒なのかい?どっちなんだい!?」と問いかける構成は、言葉の通じない異国で生き残るために削ぎ落とされたサバイバル芸だったのです。
一方、庄司智春のシグネチャーである「赤パンツ一丁での雄叫び」も、漫才のボケ担当である相方・品川祐の緻密な構成力に対抗するため、現場のハプニング性から生まれた肉体芸でした。劇場でどれほど冷ややかな空気が流れても、100%の出力で自らの肉体を晒し叫び続ける姿は、スベリ芸の境界線を突破して「狂気的な面白さ」へと昇華されました。知恵袋やSNSなどの視聴者コミュニティでも「どんなに落ち込んでいても、あの無意味なエネルギーを見ると笑ってしまう」という声が絶えません。