結論から述べると、中国の正史である司馬遷の『史記』に「呉鳳明」という武将の名は登場しません。呉鳳明は、原泰久氏が緻密な取材と構想に基づいて描いた作中屈指のオリジナルキャラクターです。
父である呉慶(ごけい)は、かつて蛇甘平原の戦いで秦の麃公(ひょうこう)と一騎打ちを繰り広げて敗死した魏の知略型武将であり、こちらは史実にモデルが存在します。呉鳳明はその呉慶の息子という設定で登場し、父の無念を晴らすべく魏の復興に尽力しています。
史実における魏国の最期は、紀元前225年に秦の将軍・王賁によって都である大梁(たいりょう)が黄河の水攻めを受け、魏王・仮が降伏して滅亡するという凄惨な結末を迎えます。史実に名前がない武将だからこそ、作中でどのようなドラマを経て散るのか、あるいは秦軍に最大の痛打を与えて散っていくのか、読者の間でも先の読めない結末に期待が集まっています。