ネット上の情報空間には、「マラセチア毛包炎は肌を清潔に保っていれば自然治癒する」「放置しても数週間で治る」といった楽観論が一部で見受けられます。しかし、これは危険な誤謬と言わざるを得ません。
結論から述べると、顔のマラセチア毛包炎が何らの抗真菌アプローチもなしに自然治癒することは極めて困難です。マラセチア菌は誰の皮膚にも存在する常在菌ですが、一度毛包の奥深く(深部毛嚢)に侵入してコロニーを形成し、免疫系との間で慢性的炎症を起こしている状態は、自然に沈静化する条件が揃いにくいのが現実です。汗をかきやすい季節、湿度、日常の皮脂分泌、日焼け止めや化粧品の油分が存在する限り、菌にとっての理想的な培養環境が維持され続けるため、無治療では数カ月から半年以上も増悪と小康を繰り返すことになります。
さらに警戒すべきは、民間療法やドラッグストアでの安易な自己治療です。抗炎症成分(グリチルリチン酸ジカリウムなど)が配合された化粧水で一時的に炎症を抑え込もうとしても、増殖している菌そのものを叩かなければ火種は消えません。それどころか、アルコール濃度の高い収れん化粧水で肌を過度に刺激し、皮膚の角質層を破壊して常在菌生態系を壊滅させてしまう二次被害も後を絶ちません。