劇中において、ウルスラの小屋で交わされる会話は『魔女の宅急便』屈指の名シーンです。飛ぶ力を失ったキキに対し、ウルスラは自身の絵画制作におけるスランプの経験を語ります。
「魔法も絵も似てるね。私も描けなくなったことがある」
「描きまくる。描いて、描いて、描きまくる」
「それでもダメなら、描くのをやめる。散歩したり、景色を見たり、昼寝したり、何もしない。そのうちに急に描きたくなるんだ」
ウルスラが語るこの創作論は、まさに八戸の生徒たちが無心で版木に向き合った制作姿勢とも深く共鳴しています。ウルスラはキキの横顔を描き足すことで絵を完成させ、キキはその絵の中に力強く存在する自分自身を見出すことで、再び前を向くきっかけを掴みました。「ウルスラの絵」は単なる劇中美術ではなく、2人の少女が己の才能とアイデンティティを取り戻すための触媒として機能していたのです。