鳥人間コンテストの歴史において、もっとも多くの人々の記憶に刻まれているのが、2011年(第34回大会)の人力プロペラ機部門で優勝を果たした東北大学「Windnauts」のパイロット・中村拓磨さんのフライトです。同年3月に発生した東日本大震災によって大学の実験施設や製作拠点が甚大な被害を受けるなか、チームは幾多の困難を乗り越えて琵琶湖のプラットフォームへと立ちました。
フライト中の無線を通じて全国に響き渡った中村さんの叫びは、まさに人間の限界を超えた魂の咆哮でした。
「フルスロットル!」
「折れるなよ!折れるなよ翼!」
「回れ回れ回れ!俺の足を信じろ!」
「桂!今何キロ!?」
「これが…これが東北大学Windnautsの飛びだぁぁぁ!」
当時の特番インタビューや手記で明かされたところによると、極度の脱水症状と激しい足の痙攣に襲われながらも、機体を支える設計担当の桂さんをはじめとする仲間たちの顔を思い浮かべ、ペダルを回し続けたといいます。旋回を成功させ、東ルートからプラットフォームへと帰還する18,687.12m(18.6km超)のフライトを成し遂げた瞬間、中村さんが叫んだ「愛してるぞぉぉぉ!」という言葉は、仲間への究極の信頼の証でした。このフライトは単なる競技の枠を超え、被災地に勇気を届けた奇跡のフライトとして今も語り継がれています。