口から声を出していると誤認されがちなコオロギですが、その実態は驚異的な精密機器ともいえるバイオリン構造です。コオロギの鳴き方の仕組み詳細まとめとしてその解剖学的特徴を紐解くと、前翅(まえまえばね)の裏側に秘密があります。
オスの右前翅の裏側には、数十個から数百個の微細な突起が並んだ「やすり(摩擦やすり)」が存在します。これに対し、左前翅の内側後縁には鋭利な「摩擦片(エッジ)」が備わっています。羽を斜め上方に持ち上げ、左右の羽を左右交互あるいは高速で擦り合わせることで、摩擦片がやすりを連続して弾き、パルス状の摩擦音を発生させます。
しかし、突起を擦るだけではこれほど大きく響く音にはなりません。コオロギの羽には「鏡膜(ハープ)」と呼ばれる薄く張った透明な膜状の区画があり、ここが共鳴板(スピーカーコーン)の役割を果たします。翅全体が強烈に共振することで、体長わずか数センチの小さな昆虫でありながら、数十メートル先まで届く約4.5〜5.5kHzの澄んだ純音を空間に放射できるのです。