街中から電柱が姿を消す議論が進む一方で、見落とされがちなのが柱自体が果たしてきた「位置特定インフラ」としての機能である。地上およそ2メートルから3メートルの位置に取り付けられた金属プレート、いわゆる電柱番号(電柱札)を目にしたことがあるだろうか。
ここには電力会社や通信会社ごとの管理コード、地域名、系統番号が整然と刻まれている。住所表示板が存在しない山間部や、入り組んだ住宅街の路地裏において、この記号列は極めて正確な座標として機能する。警察(110番)や消防(119番)に通報する際、現場近くの電柱札に記された文字列を伝えるだけで、指令センターのモニター上に通報者の現在地が数メートル単位の精度で即座にピンポイント表示される仕組みだ。無電柱化が進む地域では、この命綱とも言える位置情報システムをいかに代替するかが、新たな安全保障上の課題として浮上している。