弥生美術館の成り立ちには、一人の弁護士の執念とも言える情熱が刻まれている。創設者である鹿野琢見氏が少年時代に高畠華宵の絵に魅了され、半生をかけて収集したコレクションがこの館の骨格だ。評価が定まっていなかった「大衆的な挿絵」を芸術の域へと引き上げ、保存し続けた先見の明には脱帽するほかない。
さらに同じ建物内でつながる「竹久夢二美術館」の存在が、体験をより重厚なものにする。夢二が描いた憂いを帯びた女性像や、モダンなデザイン画の数々。二つの美術館を行き来することで、大正から昭和へと至る表現者たちの相関図が立体的に立ち上がってくる仕組みだ。