豆柴の存在を一般家庭へ決定的に浸透させた文化的起爆剤は、紛れもなくメディアコンテンツの力だった。かつて俳優の佐藤二朗が主演を務め、コミカルかつ哀愁漂う逃避行を描いてカルト的な人気を博したドラマ・映画『幼獣マメシバ』シリーズは、その愛くるしい容姿を全国のお茶の間に焼き付けた。小さな相棒「一郎」と不器用な中年男の掛け合いは、日本人に「小さな柴犬と暮らす幸福」という強固な刷り込みを行った。
さらに後年、映画『柴公園』のようなコミュニティを描く群像劇やSNSでのショート動画拡散が、その人気を決定的なものへと押し上げた。近年ではNetflixやAmazon Prime Videoといったグローバル配信プラットフォームを通じて、日本の柴犬・豆柴コンテンツが世界中で視聴されている。海外のペットドキュメンタリーでも「日本のマイクロドッグカルチャー」の象徴として特集される機会が増えた。
しかし、映像作品の中で描かれる従順でおとなしい姿と、実際の飼育現場との間には無視できない乖離がある。スクリーン越しに消費される「手のかからないぬいぐるみのような存在」というイメージが先行した結果、日本犬特有の気性の荒さや頑固さを想定しないまま飼育を始め、思わぬギャップに苦しむ飼い主を生み出す遠因にもなった。