弓道における着こなしは、単なる見た目の問題にとどまらない。古来より小笠原流をはじめとする礼法弓術では、服装の乱れは心の乱れと同義とみなされてきた。凛とした身だしなみこそが、立ち姿の威厳や気品、いわゆる「射品」を醸し出す根幹である。
明治から大正にかけて近代弓道の普及に尽力した本多利実も、射術の錬磨と同時に体配や身だしなみの整えを重視した。帯が正しく締められ、袴が美しく腰に収まっているからこそ、弓を引く動作全体に無駄な力みがなくなり、洗練された「射格」が生まれる。美しく帯を締める行為そのものが、弓道の精神性と深く結びついているのだ。