見た目の変化ばかりが強調されがちな歯列矯正だが、本来の目的は健全な噛み合わせと咀嚼機能の回復である。日本矯正歯科学会の専門医や指導医らは、安易な見た目重視の治療計画に対して警鐘を鳴らしている。歯を下げすぎた結果、頬がこけて老けた印象になったり、舌のスペースが狭まって滑舌が悪化・睡眠時無呼吸症候群のリスクが高まったりするトラブルも報告されているからだ。
「可愛くなる」という結果は、正しく機能的な噛み合わせが構築された結果として自然についてくる副産物である。骨格の限界を超えて無茶な移動を行えば、歯根吸収や歯茎の退縮といった不可逆的なダメージを招く。見た目の美しさと医療的安全性のバランスをいかに取るかが、プロフェッショナルな矯正歯科医の腕の見せ所と言えるだろう。