ネット掲示板やSNSでは、「この静止画が高速で回転して見える人は強いストレスを抱えている」「心が健康な人には完全に静止して見える」といった投稿が、定期的に数万件単位でリツイート・シェアされます。中には「某国の精神科医が開発した疲労度測定テスト」などと権威付けされたものまで存在します。
しかし、これは明確な捏造情報です。画像制作者である北岡明佳教授自身が公式ウェブサイトや学術発表の場で「錯視画像にストレス度や精神疲労を測定する機能は一切存在しない」と公式に否定しています。海外のファクトチェック機関(Snopesやロイター通信の検証部門など)も、この手の拡散投稿を「FALSE(虚偽)」と判定済みです。
それにもかかわらず、なぜ多くのユーザーが「当たっている気がする」と感じてしまうのでしょうか。ここには、誰にでも当てはまる曖昧な心理描写を自分だけの真実だと思い込む「バーナム効果」と、自分の疲労感を画像の見え方に結びつけようとする確証バイアスが色濃く働いています。
日々の業務に追われる人が「早く動いて見えたら要注意」というキャプションを目にすれば、主観的に動きを強く認識した瞬間、「やはり自分は限界なのだ」と納得してしまいます。ネット上で拡散される疲労度チェックは、科学的な測定ツールではなく、人間の心理的脆弱性を突いたソーシャルミームに過ぎません。