近年、原材料価格の高騰やリトレッドタイヤ需要の拡大を背景に、路上や無人駐車場に停めてあるトラックのスペアタイヤ盗難が深刻化しています。特に新品タイヤやアルミホイールを履かせたスペアは転売価値が高く、窃盗団に狙われやすい傾向があります。盗難未遂によってキャリアのボルトが緩められたり、チェーンが切断寸前の状態で放置されたりした車両がそのまま走行し、結果として脱落事故に発展する二次被害も報告されています。
こうした複合リスクに対応するため、先進的な運送事業者では二重・三重のスペアタイヤ脱落防止対策が導入されています。
第一の対策は、物理的な脱落防止補助ワイヤーやセーフティベルトの追加装着です。万が一巻き上げチェーンが破断したりギアが破損したりしても、別系統の頑丈なスチールワイヤーがタイヤを吊り止める構造にしておくことで、路面への直接落下を100%防ぎます。第二に、キーロック付きのスペアタイヤカバーやホイールロックナットの導入による盗難抑止です。第三に、点検完了時にキャリアの締め込み位置を示すマーキング(合マーク)を施し、日常点検時に一目で緩みを発見できる視覚的管理の徹底です。
【プロの結論】安全運行マネジメントの視点から見出すべき教訓
スペアタイヤの脱落問題は、個々のドライバーの注意力だけに依存させるべきではありません。ヒューマンエラーは必ず起きるという前提に立ち、車両管理部門がキャリアの定期交換基準を設け、防錆メンテナンスを仕組み化することが不可欠です。点検表のチェックボックスを埋めるだけの「形式的点検」から、物理的な触診・打音検査を伴う「本質的安全点検」へと社内文化を昇華させることが、事故リスクと経営リスクを確実に遮断する唯一の道です。