人魚の実在論争が21世紀に爆発的な広がりを見せた背景には、映像メディアの影響が大きい。2012年、アニマルプラネットが制作・放送した『マーメイド:ザ・ボディ・ファウンド』という番組は、世界中に計り知れない衝撃を与えた。海岸に打ち上げられた謎の遺体と、政府による隠蔽工作を追うストーリーは、あまりにもリアルだった。
しかし、この番組は巧みな演出で構成されたSFドキュメンタリー(モキュメンタリー)であった。科学者のインタビューも俳優による演技だったことが後に判明したが、放送直後は全米で「政府は人魚の存在を隠している」という騒動が勃発。あまりの反響の大きさに、政府機関が異例の打ち消し声明を出す事態にまで発展した。エンターテインメントと現実の境界線が曖昧になったこの事件は、人々の潜在意識にある「未知への渇望」を鮮明に浮き彫りにした。