歴史的な手紙の作法において、「あなかしこ」は主に女性が用いる手紙(消息文)の結び言葉として発達しました。
中世から近世にかけて、男性が漢文調の公文書や手紙で「謹言」「敬白」「頓首」といった漢語の結びを用いたのに対し、女性は仮名文(和文)の伝統を重んじました。その中で、相手に対する細やかな敬意と謙譲の意を示す言葉として選ばれたのが「かしこ」や「あなかしこ」です。
日常の手紙で広く使われた「かしこ」に対し、「あなかしこ」は感嘆詞「あな」が付く分、より敬意の度合いが高く、極めて丁寧で改まった場面で選ばれました。目上の相手や身分の高い人物へ宛てた手紙の末尾に置くことで、「言葉を尽くしてもなお恐れ多く、書き尽くせません」という謙虚な心情を伝えていたのです。