「あれほど痛い目に遭ったのになぜ?」――周囲がどれほど首を傾げても、当の本人は平然と同じトラップに足を踏み入れます。臨床心理学および行動経済学の観点から見ると、同じ失敗を繰り返す人には明確な内的メカニズムが働いています。
第1に挙げられるのが、「正常性バイアス」と「楽観主義バイアス」の二重構造です。失敗を繰り返すタイプは、過去の失敗を「たまたま運が悪かっただけ」「相手の教え方が悪かった」と偶発的な外部要因にすり替える傾向があります。「次は自分ならうまくやれる」という根拠のない全能感が、痛みの記憶を都合よく消去してしまうのです。
第2に、前頭前野の衝動制御機能とドーパミン受容の偏りです。脳科学の知見によれば、目先の刺激や快楽(怠惰、浪費、自己主張の快感など)に反応しやすい脳は、将来のリスクを予測してブレーキをかける神経回路が一時的に機能低下を起こします。過去に味わった「叱責の恐怖」よりも、直前の「欲求を満たしたい衝動」が神経伝達物質の報酬系を支配してしまう状態です。
第3の決定的な理由は、精神分析でいう「自己防衛規制(否認と他罰化)」にあります。自身の無能力や未熟さを正面から認めることは、極めて激しい精神的苦痛を伴います。プライドが高く傷つきやすい人ほど、自らの非を認める代わりに「システムが悪い」「周囲のサポートが足りない」と責任を外部へ転嫁し、内省を無意識にブロックします。
さらに見逃せないのが、アドラー心理学が指摘する「無意識の二次的利得」です。失敗を繰り返すことで、皮肉にも周囲から「手のかかる人物」として注目され、責任の重い役割から外してもらえるという免責特権を無意識に享受しているケースがあります。周囲がため息をつきながらも手を差し伸べる環境が、皮肉にも「反省しない行動」を強化し続けているのです。