1970年代中盤から1980年代前半にかけて、日本の文房具市場は前例のない「高機能化・キャラクター化・玩具化」のピークを迎えました。高度経済成長を経てプラスチックの精密成型技術が劇的に向上し、メーカー各社が児童の購買意欲を刺激する斬新なギミックを競い合うように投入した時代です。
当時の小学生にとって、机の上にある筆箱や消しゴムは単なる学習用具ではありませんでした。休み時間に友人と遊び、自分の個性を主張するための「最強のコミュニケーションツール」であり、一種のステータスシンボルだったのです。昭和レトロ文房具を振り返る際、50代の脳裏に真っ先に浮かぶのは、ボタンを押せば何かが飛び出す機械仕掛けの高揚感と、筆箱を開けた瞬間に漂う甘い化学香料の匂いです。
しかし、過熱しすぎた文房具ブームは、やがて教育現場との激しい摩擦を生み出し、昭和の終わりとともに急速に姿を変えていくことになります。