赤ちゃんの排泄物のにおいは、口にする栄養源によって劇的に変化します。腸内に生息する細菌群(腸内細菌叢:マイクロバイオーム)の種類が、摂取する成分によって大きく左右されるためです。
母乳栄養の赤ちゃんの場合、腸内はビフィズス菌や乳酸菌などの善玉菌が優位になりやすい環境にあります。母乳に含まれるオリゴ糖や乳糖が発酵すると乳酸や酢酸が作られるため、便やおならは「やや甘酸っぱいにおい」や「ヨーグルトのような発酵臭」になるのが一般的です。ただし、母乳であっても排便間隔が空いて腸内に長くとどまると、水分が吸収されて悪臭物質の濃度が高まり、刺激臭を帯びることがあります。
一方、粉ミルクを主乳としている赤ちゃんでは、牛乳由来のたんぱく質(カゼインなど)や脂質を多く含んでいるため、腸内細菌による分解プロセスで硫黄化合物が発生しやすくなります。これが「粉ミルクを足すとおならが急に大人っぽく臭くなる」と感じられる直接的な要因です。病的な異常ではなく、含まれる成分の代謝による生理的な差異に過ぎません。
さらに生後5〜6ヶ月頃から始まる離乳食初期以降は、腸内環境における最大の転換期を迎えます。野菜、穀物、そして魚や肉などのたんぱく質が体内に入ってくることで、腸内フローラは大人の構成へと急速に近づいていきます。それまで無菌に近い状態からスタートした赤ちゃんの腸が、多様な食物を分解できる成人型の細菌叢を獲得していく過程で、おならのにおいが本格的な「大人の便臭」へと変化していくのです。