愛三工業に「やばい」「経営破綻するのではないか」という極端な憶測が付きまとう背景には、同社が長年培ってきた事業構造の根幹に対する市場の疑念が存在します。愛三工業の主力製品は、電子制御スロットルボデー、燃料ポンプモジュール、インジェクター、エンジンバルブ、キャニスタなど、ガソリン車やディーゼル車の心臓部に直結する機能部品です。
数年前に欧州を中心に吹き荒れた「2030年代に内燃機関車を全廃する」という急進的なBEV(バッテリーEV)シフトの潮流において、株式市場や就活生の間では「エンジンが不要になれば、燃料系部品メーカーの仕事は丸ごと消滅する」という短絡的なシナリオが急速に拡散しました。この産業構造への危機感がネット掲示板やSNSで増幅され、「愛三工業 潰れる」という刺激的な検索ワードが定着してしまったのが噂の発端です。
さらに、トヨタ自動車の持分法適用関連会社としてトヨタ向け売上比率が高いことから、「親元の意向次第で切り捨てられるのではないか」という下請け構造に対する漠然とした懸念も拍車をかけました。しかし、こうした表面的な悲観論は、自動車産業の現場で実際に起きている力学を捉えきれていません。