「月100時間超の残業代がゼロという現実を、これ以上子どもたちの前で隠し通すことはできません」。首都圏の公立中学校で教壇に立つ40代の男性教諭は、絞り出すような声でそう語った。半世紀前に制定された通称「給特法(公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法)」は、教員の残業代を支給しない代わりに月額基本給の4%を「教職調整額」として一律支給する仕組みを取ってきた。だが、現代の教育現場における過酷な勤務態勢とこの制度の乖離はあまりにも大きい。
全日本教職員組合(全教)は、この構造的欠陥に対して真っ向から異議を唱えてきた。法改正に向けた動向が急速に具体化する中、全教が立ち上げた「給特法改正プロジェクト」は、時間外勤務の手当支給化や明確な時間上限の設定を強く要求している。文部科学省側が示そうとする調整額の引き上げ案に対し、現場からは「単なる手当の増額でお茶を濁せば、長時間残業を正当化する口実として悪用されるだけだ」と強い反発の声が上がる。文部科学大臣との折衝や国会に向けた働きかけの裏には、これ以上の犠牲者を絶対に出さないという現場の執念が滲む。