大相撲の女人禁制を理解する上で外せないのが、土俵が単なるスポーツの競技場ではなく、「神を招く祭壇(聖域)」として設計されている点です。本場所の前日には必ず「土俵祭」が執り行われ、中央の穴に米、塩、スルメ、昆布などの縁起物が鎮められ、神職を務める立行司によって土俵が清められます。
この土俵の周囲に張り巡らされるのが、宗教的な境界線である「結界」です。神道において土俵は神が宿る空間とされ、そこに立ち入る者には徹底した清浄さが求められます。
ここで女性が排除される論理的背景となったのが、神道特有の「穢れ(けがれ)」の思想です。注意すべきは、神道における「穢れ」とは道徳的な悪や個人の劣等性を意味するものではなく、本来は「気枯れ(生命力が衰微した状態)」を指す概念でした。しかし中世以降、出血を伴う月経や出産、あるいは死が生命力の低下や異常事態と結びつけられ、禁忌(タブー)として扱われる習俗が定着していったのです。
大相撲は現在も興行の中に神事の形式を色濃く残しているため、日本相撲協会はこの「聖域の清浄を保つための宗教的規範」を拠り所に、土俵への女性の立ち入りを一貫して制限しています。