なぜ、周囲がどれほど「魅力的だ」と伝えても、本人は自らを醜いと思い詰めてしまうのか。この病理の世界的権威である精神科医キャサリン・フィリップス博士の研究は、身体醜形障害患者の脳における特異な情報処理メカニズムを明らかにしている。患者の視覚野は、顔全体のバランスを捉える「全体処理」が著しく低下し、極めて局所的な微細部分のみに過剰反応する「詳細処理」のバグを起こしているのだ。
つまり、彼らは実際に「歪んだ自分」を見ている。主観的な思い込みではなく、知覚そのものがエラーを起こしている状態だ。この認知的歪みに、幼少期のいじめ体験、完璧主義的な気質、そして外見至上主義的な家庭環境や文化的プレッシャーが複雑に絡み合う。一度この神経回路のトラップに陥ると、理性的な説得や客観的な数値は何の意味も持たなくなる。