結婚から半世紀以上が経過してもなお、二人の間に子供はいません。世間では様々な憶測が飛び交いましたが、タモリが過去に対談番組やエッセイ、親しい文化人仲間との席で明かしてきた人生論を辿ると、そこには極めて論理的かつ自然体なポリシーが存在します。
タモリはかつて、親子の関係性について「親が子供に対して勝手な期待を押し付けることへの違和感」や「自分の遺伝子を残すことに特別な執着がない」という趣旨の発言を残しています。「子供を作って一人前の大人になるという社会規範に縛られる必要はない」という考え方であり、これは昭和の高度経済成長期において極めて先進的な価値観でした。
子供がいなかったからこそ、二人の結びつきは「父と母」という役割分担に矮小化されることなく、対等な人生のパートナーとして保たれ続けました。その絆を証明するエピソードは枚挙にいとまがありません。
下積み時代、タモリが漫画家・赤塚不二夫邸に居候し、芸を磨きながら毎晩のように酒を酌み交わしていた時期、妻は文句ひとつ言わずに福岡から見守り、夫の才能を信じ続けました。タモリがブレイクして莫大な収入を得るようになってからも、妻は派手な社交界に一切顔を出さず、個人事務所の金銭管理を几帳面に行い、夫が無用なトラブルに巻き込まれないよう防波堤の役割を果たしてきたのです。
また、料理の腕前がプロ級であるタモリは、日頃から妻のために自ら腕を振るっています。朝食の準備や夕食の献立作りをタモリ自身が楽しみながら担当し、夫婦で食卓を囲む時間は、30年以上続いた『いいとも!』の過密スケジュールの中でも絶対に侵されない聖域でした。