ファッション愛好家の間で常に議論の的となるのが、キャロルクリスチャンポエルがなぜ高いのかという根源的な問いです。一般的なラグジュアリーブランドが高価格を設定する際、その大半は広告宣伝費やランウェイショーの運営費、グローバルな店舗展開の維持費に充てられます。しかし、キャロル・クリスチャン・ポエルは一切の広告を行わず、コレクション発表のサイクルからも完全に脱退しています。
価格が高騰する最大の理由は、原材料の調達から最終加工に至るプロセスが異常なほど非効率かつ実験的であることにあります。例えば、ブランドの象徴であるコードバン(馬の臀部革)やカンガルーレザーは、厳格な基準で選別された後、製品の形に縫製されてから巨大な樽で丸ごと染色・熱処理される「オブジェクトダイ(製品染め・オーバーダイ)」工程を経ます。この工程により革は予測不能な収縮と硬化を起こし、通常の工場ラインでは製造不可能な歪みと陰影を獲得します。当然ながら歩留まりは極めて低く、熟練の職人が手作業で1点ずつ仕上げるため、キャロルクリスチャンポエルの定価はレザージャケットで100万円〜160万円台、短靴でも30万円〜50万円台に達します。
さらに、金属パーツは市販品を使わず、チタンや外科用ステンレスを自社鋳造して採用。ボタンの代わりに医療用ステープル(ホッチキス)で留められた構造や、関節の可動域を意図的に制限するパターンカッティングなど、アルチザン系ブランドの評判の中でもCCPは「着用者の身体を再構築する彫刻作品」として別格の敬意を集めています。